2010年9月15日水曜日

かけがえのないもの

組織には目的があって、それに必要な機能が求められる。
すべての組織でそうだ。
組織とは元々目的があって出来たものなのだから。

けれど、人間自体は単純にそんな風に出来ていない。
泣いたり笑ったり、つむじをまげたりもする。
ケンカもすれば恋もするし、感動したりもする。
だから少々ややこしい。

ややこしいから組織の中ではその辺のところは無視することにされている。
ただただ、売上を上げたり、プロジェクトを完遂するという目的のために、
その機能を果たすことを求められる。

けれど人間が集まって、何らかの行為をしていれば、
そこにはいろんなごちゃごちゃした愛憎がうまれて、
そいつがいい風にも悪い風にもいろいろと影響していく。

家族と同じだ。
家族も最初から家族なのではない。
いろんな出来事の積み重ねで生まれた愛憎が、
長い年月の中で堆積岩のように変異して、その家族らしさ、になる。

他人の家に行くとよくわかる。
その家の空気があって、においがある。
新婚さんの家はまだそのにおいが薄い。

企業にもそれがある。
その企業独特の「らしさ」があって、
それが空気にまでしみ出している。

僕はその「らしさ」が愛おしくて仕方がないのだ。

その「らしさ」とは歴史であり、しくみであり、
机の配置から、朝礼のやり方、名前の呼び方、決済の方法、
人々の表情、褒め言葉、叱り方、トイレの掃除を誰がするのか、
なんてことにまで、全部にしみ出している。

僕にはそれが見える。
よおく目を凝らせばきっと誰でも見える。

それこそが「かけがえのないもの」なのだ。
かけがえのないとは、交換できない、ということ。

家族が交換できないように、企業にもそれは必ずある。
部分的か全体的かは別にしても、必ずある。

それを忘れてはいけないのだ。
この世の中のいろんなところにはびこっている、
機能主義に打ち負かされてはいけないのだ。

ノルマが達成できない営業マンは交換すればいい。
自社に強みを築くよりもM&Aするほうが早い。
効率を考えればアウトソーシングした方がいい。
業績が悪くなれば派遣切りするのは当たり前。

それだとなんかおかしいでしょ。
そんなんじゃ成り立たないと思わない?
人間のやってる世の中なんだから。

甘ったれたことを言うつもりはない。
けれど僕は、世の中を人間の手に取り戻したいのだ。
まず家族、学校、そして、企業を。